矯正のゴールとは?その①
連日茹だるような暑さが続きますが皆様いかがお過ごしでしょうか。
しま歯ならび矯正歯科の島和弘です。
電力不足や燃料不足が叫ばれている昨今、当院でも協力できるところは協力しなければ!と使わない電源はオフにして節電に励んでおります。
本日は、当院でよく頂く、「矯正歯科ってどうなれば終わりなの?」という質問に対して詳しくご説明させていただきます。
矯正治療において、「見た目を綺麗にする」、というのは大前提であり、その他にも矯正治療を行う上で目指すべきゴールというものがあります。
患者様の歯や顎の状態によって必ずしも達成できるとは限りませんが、ゴールの目標となっているものが以下の点になります。
① 適切な奥歯の噛み合わせ (AngleⅠ級の臼歯関係を目指す)(以下臼歯関係)。
② ガタガタ(以下叢生)を解除した上で適切な前歯の垂直的、水平的な被り具合(適切なoverjet、overbite)。
③ 上下顎歯列の正中を一致させる。
基本的にこれらはまずゴールの目標とするものです。そこから患者様個々人の状態に合わせて微調整をしていくのが矯正歯科になります。
今回は、①適切な奥歯の噛み合わせについて細かく解説していきます。
臼歯関係を決定するのにAngleの分類が最も簡便に用いられています。
Angleの分類は以下のようになります。
① Angleが発表した不正咬合の分類,上下顎の咬合を上下顎歯列弓の近遠心的関係だけに焦点をあてて分類したもの。
② 上顎第一大臼歯の位置(上顎第一大臼歯 の位置不変説)をその基礎として,上顎歯列弓に対する下顎歯列弓の近遠心的な関係を上下顎 第一大臼歯の咬合関係によって評価したものである.
③ Angle の不正咬合の分類では、上下顎の第一大臼歯の咬合関係を頰側面からみて、上顎第一大臼歯の近心頰側咬頭の三角隆線が下顎第一大臼歯の頰面溝に接触し,舌側面では上顎第一大 臼歯の近心舌側咬頭が下顎第一大臼歯の中心窩に咬合するものを正常としている. (出典:医歯薬出版 矯正歯科学第6版より抜粋)
③に合致するものをAngleⅠ級と呼称し、目標とするのですが、あくまで上顎の6歳臼歯(第一大臼歯)を基準とした前後関係のみの基準であり、簡便ではあるものの完璧であるとは言いづらいものになります。
その為、より正確に判断するための基準が必要になります。そこで用いられる基準が、
「Andrewsの正常咬合の6つの鍵」です。
① 上下の奥歯が1歯2歯の関係で良好にかみ合っていること(緊密な咬合嵌合)
② 歯を正面から見た時の前後的な傾きが適正であること(適正なアンギュレーション)
③ 歯の横から見た時の傾きが適正であること(適正なトルク)
④ 歯の捻じれ(捻転)がないこと(ローテーションを認めない)
⑤ 歯と歯の間は緊密で間隙がない(緊密な歯冠接触)
⑥ 咬合平面が平坦である(平坦なスピー彎曲)
以上のような細かい分類が設けられています。
これを達成することが矯正歯科における適切かつ理想的な奥歯の関係となります。
(顎の状態や歯のサイズで達成が難しい場合もあります。)
また、歯の配列には形態と機能、つまり咬合と下顎運動で調和が得られなければなりません。調和が欠けた状態では機能が十分に発揮されない可能性があります。
その為、Ingervallは機能的に最適な咬合として以下のように示しました。
① 閉口時に咬合干渉がないこと。
咬頭嵌合位および後退位は同じ平面にあり、その距離が1mm以下のところにあるか。
② 咬頭嵌合が安定していて、顎関節が無理のない状態であり、不必要な筋肉の緊張がないこと。
咬頭嵌合位ではほとんどの歯が両側性に安定して接触し、咬頭嵌合位と後退位の間にある咬合位において両側性の側方歯の接触があるかどうか。
③ 下顎骨の左右の移動時に咬合干渉がないこと
両側性の左右の運動があり作業側での複数歯の接触と前方運動時の複数前歯の接触があり、非作業側の干渉がない状態であるか。
矯正歯科治療の前後に必ずこういった項目を確認し機能分析を行う必要があります。
細かいお話でしたが、矯正治療の終わりに向けて目指すポイントの一つ、臼歯関係の基準のお話でした。
矯正治療は「矯正治療を行う前の検査と診断」そして見落としがちですが、「治療終了直前、治療終了後の評価」が大切です。
しま歯ならび矯正歯科ではいつでもご相談や検査を受け付けております。
ご気軽にいらっしゃって下さい。
しま歯ならび矯正歯科 島和弘