矯正治療中の歯磨きと歯磨き粉の選び方|ブラケット・アタッチメント装着時の磨き方ガイド
- 公開日:2022年9月12日
- 更新日:2026年6月5日
- お知らせ,歯科知識,予防・メインテナンス
矯正治療中の歯磨きは、通常の何倍も大切です。ブラケットやアタッチメントの周りに食べ物が残ると、虫歯・脱灰(永久に消えない白い斑点)・歯肉炎のリスクが2〜5倍に上がります。さらに、口腔内が不衛生だと矯正治療を中断・延期せざるを得なくなることも。
本記事では矯正治療を専門に行う しま歯ならび矯正歯科 の歯科衛生士が、磨き残しが招く具体的なデメリット、ブラケット装着時とアタッチメント装着時それぞれの正しい磨き方、矯正中の歯磨き粉を選ぶ判断基準まで詳しくお伝えします。
矯正中に歯磨きを怠ると起こる5つのデメリット
矯正治療を始める前にぜひ知っておいていただきたいのが、磨き残しが招く具体的なリスクです。歯並びを綺麗にする治療なのに、虫歯や脱灰だらけになってしまっては本末転倒です。
① 虫歯リスクが2〜5倍に上がる
ブラケット・ワイヤーの周りや、マウスピース装着で唾液の自浄作用が低下した状態では、食べカスや歯垢(プラーク)が口腔内に長時間滞留します。永久歯の虫歯は治療してもエナメル質が完全に元通りにはなりません。矯正期間が長くなるほど、虫歯リスクは累積していきます。
② 脱灰(ホワイトスポット)が永久に残る
脱灰とは、歯の表面のカルシウムやリンが酸によって溶け出した状態です。ブラケットを外したときに、白い四角形の斑点として現れるのが典型的な症状で、初期虫歯の一歩手前。
怖いのは、一度脱灰してしまうと白い斑点が消えにくいことです。フッ素塗布などで進行は止められますが、見た目の白さは長く残ってしまうことが多く、せっかく矯正で歯並びが綺麗になっても審美的に台無しになりかねません。
③ 歯肉炎・歯周病の発症
歯ぐきの腫れ・出血・赤みが進行すると、歯ぐきが下がり(退縮し)歯が長く見えるようになります。重度になれば歯の動揺、場合によっては抜歯が必要になることも。歯周病は矯正治療そのものを困難にする原因にもなります。
④ 矯正治療が中断・延期される
虫歯ができたら、矯正治療を一旦中断してブラケットを外し、虫歯治療を行わなければなりません。マウスピース矯正でも、追加のアライナー作成や再スキャンが必要になることがあります。当院の経験上、衛生状態が悪い患者さんは平均で3〜6ヶ月、治療期間が延長するケースもあります。
⑤ 口臭・装置の黄ばみ・不快感
アライナーが黄ばむ・臭うといった見た目の問題に加え、ご自身でも気になる口臭や、通院時にスタッフから衛生状態を指摘される心理的負担も発生します。
なぜ矯正治療中は虫歯リスクが高まるのか
装置の周りに汚れがたまりやすい構造
ブラケット・ワイヤーは歯の表面に複雑な形で装着されているため、通常の歯磨きでは届かないポケットが無数に生じます。マウスピース矯正のアタッチメントも、歯の表面に小さな突起を作るため、その縁に汚れが入り込みます。
唾液による自浄作用が阻害される
唾液には食べカスを洗い流す自浄作用と、歯の再石灰化を促す作用があります。マウスピース(アライナー)を装着している間は、歯の表面に唾液が届きにくくなるため、この自浄作用が大きく低下します。
食べ物が引っかかりやすく除去が難しい
特に繊維質の食品(葉野菜・肉の繊維)はブラケットに絡みつきやすく、口をすすぐ程度では落ちません。気づかないうちに汚れが残ったまま長時間経過することが、虫歯と歯肉炎の温床になります。
ブラケット装着時の正しい歯磨きの仕方(ワイヤー矯正)
ワイヤー矯正中は1本の歯ブラシで完結させないことが鉄則です。複数の道具を組み合わせて、ブラケット周辺の死角をなくしていきます。
必要な3つの道具
- 歯ブラシ:山型カット または 段差付きヘッド(ブラケットを跨いで磨ける形状)
- ワンタフトブラシ:毛束が1つの小さなブラシ。ブラケット周りや装置の隙間専用
- 歯間ブラシ:ワイヤーの下を通す細いブラシ(サイズSS〜S推奨)
磨く順番(推奨)
- 歯ブラシで全体を軽く磨く(食べカス除去)
- ワンタフトブラシでブラケット1つずつ丁寧に(ブラケットの上下から)
- 歯間ブラシをワイヤーの下に通す(奥歯から1本ずつ)
- うがい薬・マウスウォッシュで仕上げ
ブラケット周辺の磨き方のコツ
- ブラケットの「上側」を 毛先45度 の角度でブラシ
- ブラケットの「下側」も同様に45度
- ブラケットの「左右」の隙間にワンタフトブラシを当てる
- 力を入れすぎない(ブラケットが外れる原因になります)
ワイヤー下の磨き方
- 歯間ブラシをワイヤーの下から通す(奥歯から手前へ1本ずつ)
- 細いブラシ(SS〜S)から始めて、入る場所にはMサイズ
- 入りにくい場合は、フロススレッダーを使ってデンタルフロスを通す
磨き残しを確認する方法
市販の染め出し液(プラークチェッカー)を週1回程度使うと、自分の磨き残し癖がよく分かります。ドラッグストアや薬局で購入できます。鏡を見ながら、舌側・頬側・噛み合わせの面それぞれをチェックしてください。
アタッチメント装着時の正しい歯磨きの仕方(マウスピース矯正)
大原則:アライナーは必ず外して磨く
マウスピース矯正で歯を磨く際は、必ずアライナー(マウスピース)を外してから磨いてください。装着したままでは歯の表面に届きません。アライナー自体も毎回洗う必要があります。
必要な道具
- 歯ブラシ:普通のヘッドサイズでOK
- ワンタフトブラシ:アタッチメント周りの汚れを取る
- デンタルフロス:歯と歯の間(マウスピース矯正でも必須)
アタッチメント周辺の磨き方
アタッチメントは歯の表面に小さな突起として装着されているため、その縁(境目)に汚れがつきやすいのが特徴です。
- ワンタフトブラシで1つずつ円を描くように磨く
- 唇側(外側)と舌側(内側)の両方から
- 歯ブラシだけだとアタッチメントの陰が磨けないため、ワンタフトブラシは必須
アライナー(マウスピース)の洗浄方法
- 毎回外したタイミングで流水で洗う
- 1日1回は市販のマウスピース・入れ歯用洗浄剤に浸して除菌
- 歯磨き粉でゴシゴシ磨かない(研磨剤でアライナーに細かい傷がつき、菌の温床になります)
- 熱湯はNG(変形してフィットしなくなります)
装着前のチェック
- 歯を磨いてからアライナーを装着
- 装着前にアライナー内側を水でゆすぐ
- 装着中は水以外(お茶・ジュース・コーヒー等)を飲まない
矯正中の歯磨き粉を選ぶ4つのポイント
矯正治療中の歯磨き粉は、特別な医薬品ではなく一般的な市販品で十分ですが、いくつか押さえておきたい選び方の基準があります。
① フッ素濃度(成人1,450ppm、子ども950ppm)
フッ素は虫歯予防と歯の再石灰化に不可欠です。矯正中は虫歯リスクが上がるため、年齢に応じた上限濃度を選びましょう。
- 6歳未満:500ppm
- 6〜14歳:950ppm
- 15歳以上(成人):1,450ppm
市販の歯磨き粉のほとんどにフッ素濃度が記載されています。パッケージの成分表示をご確認ください。
② 研磨剤の有無
研磨剤は歯の着色汚れを落とすために配合されますが、矯正中は以下の理由で低研磨もしくは無研磨タイプがおすすめです。
- ブラケットやアタッチメントに微細な傷をつける可能性
- マウスピース矯正では装置を傷つけて菌が繁殖しやすくなる
- ゴシゴシ磨きを助長してしまう
「ジェルタイプ」や「低研磨」と表示されたものが扱いやすいです。
③ 殺菌成分(IPMP・CPC等)
歯肉炎リスクが高まる矯正中は、殺菌成分入りのものを選ぶと安心です。代表的な成分:
- IPMP(イソプロピルメチルフェノール)
- CPC(塩化セチルピリジニウム)
- クロルヘキシジン
④ 発泡剤(低発泡 or 無発泡)
泡が立ちすぎる歯磨き粉は短時間で磨いた気になりやすく、矯正中のように丁寧に時間をかけたい場合には不向きです。低発泡またはジェルタイプを選ぶと、長時間しっかりブラッシングできます。
矯正中の歯磨きに関するよくある質問(FAQ)
Q. 矯正中はフッ素入りでないとダメですか?
A. 必須ではありませんが強く推奨します。矯正中は虫歯リスクが2〜5倍に上がるため、成人は1,450ppm、子どもは年齢に応じたフッ素入り歯磨き粉を選ぶことで、エナメル質の再石灰化を促し脱灰を防げます。
Q. 装置に色がつくのは歯磨き粉のせいですか?
A. 一部の研磨剤や着色料がワイヤー矯正の装置に色素を残すことがあります。ジェルタイプや低研磨剤の歯磨き粉を選ぶと装置への影響を最小化できます。
Q. マウスピース矯正中は装置を外して磨くのですか?
A. はい、必ず外してから磨いてください。装着したままでは歯の表面に歯ブラシが届きません。また、外したアライナー自体も毎回水で洗い、1日1回は専用の洗浄剤に浸すことをおすすめします。
Q. 子どもの矯正中、何ppmのフッ素を選べばいいですか?
A. 厚生労働省の推奨に従い、6歳未満は500ppm、6〜14歳は950ppm、15歳以上は1,450ppmが目安です。矯正中はリスクが高いため、対象年齢の上限濃度を選ぶことをおすすめします。
Q. 1日に何回磨けばいいですか?
A. 1日3回(朝・昼・夜)が基本です。特に夜の歯磨きは唾液量が減る就寝時に備えて最も重要なので、ブラケットやアタッチメント周りまで丁寧に時間をかけて磨いてください。
Q. 出先で歯磨きができないとき、どうすればいいですか?
A. 歯磨きシート(ウェットティッシュ型のオーラルケア用品)を持ち歩くと便利です。ドラッグストアやコンビニで購入できます。完璧ではありませんが、食べカスや表面の汚れを拭き取るだけでも口腔内環境は大きく改善します。
Q. 食事のたびに歯磨きしないとダメですか?
A. 可能な限り食事のたびに歯磨きをお願いします。特にワイヤー矯正では食後の食べカスがブラケットに残りやすく、放置すると虫歯リスクが急上昇します。難しい場合は、最低限うがいや歯磨きシートでの拭き取りを行いましょう。マウスピース矯正の場合、食事後はアライナーを装着する前に必ず歯磨きをしてください。
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