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シザースバイトの徹底解説!|しま歯ならび矯正歯科【公式】|堺市・鳳駅の矯正歯科

シザースバイトの徹底解説!

シザースバイト(鋏状咬合)の徹底解説

シザースバイト(鋏状咬合)は、上顎後方歯列が外側(頬側)に傾斜し、下顎後方歯列が内側(舌側)に傾斜することで、上下の奥歯が正常に咬合しない稀な不正咬合です 。正常な奥歯の「山と谷」の接触が失われ、点接触中心の噛み合わせとなるため、噛む力の分散が不均一になります 。

結果として、片側の歯に過大な力がかかりやすく、咀嚼筋のアンバランス、顎関節へのストレス増大、咀嚼機能の低下などを招きます 。特に片側性の場合、下顎の偏位から顔面非対称や顎骨の左右差が生じやすく、成長期で放置すると顎顔面の発育バランスを著しく乱します 。

本記事では、シザースバイトの定義と頻度の確認から始め、両側性と片側性の違いを明確に比較し、顎関節(TMJ)への影響、成長発育への悪影響、咬合機能への悪影響について、最新の学術文献を引用しながら詳述します。さらに、矯正治療における治療オプションの比較表を示し、水平方向の問題(シザースバイトなど)を垂直・前後的問題より優先して治療すべき理由や、**リンガルアーチ・矯正用アンカースクリュー(TAD)を固定源とした治療法(PLAS等)**の具体的な利用例、治療期間(およそ3~12ヶ月)や第三大臼歯抜歯の要否といった臨床要点を解説します。

目次

シザースバイトとは

両側性と片側性の違い

顎関節(TMJ)への影響

成長発育への悪影響

咬合機能への悪影響

治療オプションの比較

参考文献

チェックリスト

 

シザースバイトとは

シザースバイトは、上顎の奥歯列が幅広く外側に張り出し、下顎の奥歯列が狭く内側に入り込んで、上下の奥歯が「はさみ」のように交差する不正咬合です 。具体的には、上顎の奥歯の頬側咬頭が下顎の奥歯の頬側咬頭より外側に位置し、上下歯のかみ合わせ面が一致しません 。

このため奥歯の接触面積が大幅に減少し、正常時の咬合高径が低下したり、一部の歯だけで噛むようになります 。 発生頻度は非常に低く、一般集団で1%前後とされています 。児童期では特に見落とされがちで、ある報告では小児で約1.1%、成人で数%と報告されています 。成長期に自然治癒せず放置すると、下顎の挙上や歯牙挺出により過蓋咬合が深くなる傾向があります 。

 

両側性と片側性の違い

シザースバイトには両側性と片側性のタイプがあり、臨床的性質に違いがあります。両側性では左右両側の奥歯が同様にシザースバイトになっており、上下顎とも横幅に不調和がある骨格パターンが多いです。一方、片側性では一方の奥歯だけがシザースバイトとなり、下顎が反対側へ偏位しやすい特徴があります 。

文献的には片側性の方が圧倒的に多く、ほとんどの症例は片側性です 。Xieらも「シザースバイトは片側性の方が多い」と報告しています 。 臨床上重要なのは、片側性シザースバイトでは下顎の偏位・顔面非対称を生じやすい点です。片側性患者は常に健側で咀嚼するため、「健側優位」の咀嚼パターンが形成されます。Tomonariらは片側性患者の96%がシザースバイト側で噛まず、作業側筋活動が低下していると報告しました 。Applied Sciences誌では、片側性患者は下顎体や下顎枝に明らかな非対称が認められ、対照群に比べマッチング率(対称性)が著しく低いことが示されました 。つまり片側性では下顎の形態的非対称が明白に観察されます。一方、両側性シザースバイトでは、上下歯列ともに奥行き方向で狭窄しており、顎全体の拡大が必要になります。両側性は左右非対称は起こりにくいですが、両側共に正常に噛まないため咀嚼効率が著しく低下します。Seminars in Orthodontics誌は両側性では左右対称的に口蓋が広がる一方、片側性では口蓋の高低差と咬合平面の傾斜が生じると指摘しています 。 治療しやすさでは、一般に両側性の方が単純で片側性は難度が高いとされます 。片側性は下顎偏位の補正を含める必要があり、力のかけ方が難しくなります。このように両者は原因も臨床像も異なるため、診断時に明確に区別し、それぞれに最適なアプローチを計画することが重要です。

 

顎関節(TMJ)への影響

シザースバイトによる異常な咬合関係は、顎関節に偏った負担をもたらします。特に片側性シザースバイトでは、咬合偏位によって下顎が常に一方向へずれるため、片側の関節に慢性的な過負荷がかかります。

Liらは片側性患者において、シザースバイト側の顎関節顆頭容積と表面積が健側より有意に大きいことをCBCT解析で示しました 。

さらに顆頭上方および前方スペースが拡大しており、これは異常な咬合力が顎関節の顆頭形態を変化させた結果と考えられます 。

つまり、長期的に片側にかかる過大な荷重が顆頭の後部を中心に形態損傷を引き起こし、下顎骨の左右差を助長します。

またTomonariらの研究では、片側シザースバイト患者の噛み合わせ側(シザースバイト側)では側頭筋・咬筋の筋電活動が低下し、

正常側との筋バランスが崩れていました 。このような筋バランスの不均衡は顎関節の動きにも負荷を与え、

顎関節症(TMD)のリスクを高めます 。実際、文献には「シザースバイトは顎関節症や顎関節痛を引き起こしやすい」旨の記述があり 、

開口時のクリック音や顎関節の痛み・動作制限を訴えることがあります。 矯正臨床では、水平的なシザースバイトを先に是正することが顎関節にも望ましいとされています 。

これはまずシザースバイトを治し、下顎を正しい中心位に戻すことで顎関節への不均等な負担を軽減し、以後の垂直・前後的矯正治療を効率化するためです。

実際、Baikらの成人症例では、上顎挙上に2本のTAD、下顎奥歯の舌側傾斜矯正にリンガルアーチを用い、顎関節への悪影響が抑えられたと報告されています 。

このようにシザースバイト治療は顎関節の評価・安定を重視して計画しなければなりません。

 

成長発育への悪影響

成長期のシザースバイトは、顎骨や顔面の発育に深刻な影響を及ぼします。片側性の場合、下顎骨が偏位したまま成長するため、

下顎・顔面の左右非対称が顕著になります 。Weinsteinらは「放置されたシザースバイトでは咬合高径の異常増大、顆頭・下顎枝の左右差、咬合平面の傾斜、成長干渉など多岐にわたる悪影響が生じる」と述べています 。

特に顎関節の適応性再形成により、シザースバイト側の顆頭は成長が抑制され、健側より小さくなることが指摘されています 。

これにより、下顎の高さや長さに左右差が生じ、顔面非対称と機能異常を助長します。

さらに、シザースバイトがあると正常な咬合を妨げられるため、上顎の過蓋咬合が進行しやすくなります。

Baikらは「シザースバイトは自然治癒せず、上顎歯の過伸長とともに咬合高径が深くなる」と報告しています 。

つまり、上顎奥歯がどんどん挺出して垂直方向のズレが拡大し、咬合機能が悪循環に陥ります。

Xieらも「シザースバイトは下顎の成長や顔貌に悪影響を与える」と警告しています 。

これらの知見から、シザースバイトの放置は骨格的成長の非対称や深い咬合傾斜を固定化し、顎顔面発達に大きな悪影響を及ぼすことが明らかです。

したがって、特に成長期には早期に介入し、顎骨発達を正常軌道に戻すことが重要です。

 

咬合機能への悪影響

シザースバイトによって奥歯が正常に噛み合わないため、咬合機能にも多くの不都合が生じます。

まず、正常な咬合では上下歯列全体で咀嚼圧を分散しますが、シザースバイトでは接触点が局所化し、一部の歯に過度の力がかかります 。これにより接触歯の摩耗や歯根への負荷が増大し、知覚過敏や咬耗(歯のすり減り)が起こりやすくなります。

また、片側でばかり咀嚼することで咬合不全側の歯列は挺出し、対合歯は逆挺出する傾向があります 。

結果として前歯部のオーバージェット/オーバーバイトが深くなり、噛み合わせの不均衡が全体に波及します。

次に、咀嚼効率の低下です。シザースバイト側で奥歯が機能しないため、常に片側のみで食物をすり潰す必要があります 。

Tomonariらの研究でも、片側性では咀嚼時の閉口時間が延長し、顎の運動範囲が狭いことが示されています 。

これにより咀嚼回数が増えて消化効率が悪化し、長期的には胃腸にも影響を及ぼす可能性があります。

また、口腔衛生の面でも不利です。かみ合わせが偏るとプラークが溜まりやすくなり、虫歯・歯周病リスクが高まります。

実際、日本の臨床報告では「シザースバイトを放置すると歯や歯茎、顎関節に長期的な悪影響が及ぶ」と指摘されています 。

総じて、シザースバイトは咬合の全体バランスを崩し、口腔機能の劣化を招く不正咬合です。

治療により噛み合わせを正常化しない限り、歯列・顎関節の健康に二次的な問題を引き起こし続けることになるため、早期治療が推奨されます。 治療オプションの比較 シザースバイト治療には症状と年齢に応じて様々な方法があります。

以下に代表的な治療法を表にまとめ、その適応や特徴を比較します。

 

治療法

 主な適応例 

特徴・メリット 備考・治療期間等

リンガルアーチ+バイトブロック<br>(下顎拡大用アーチ) 片側の第2大臼歯シザースバイト ・非協力度装置で持続的に力をかけられる <br>・シザースバイト歯を内側へ押し込む力点集中が可能 – 2~6ヶ月で改善(個人差あり) <br>- 舌側スペースを要する TAD(矯正用インプラント)+エラスティック 重度・片側性シザースバイト ・骨固定源から強力な力をかけ、歯の望ましい方向へ誘導できる <br>・副作用が少ない – 3~12ヶ月程度(症例に依存) <br>- 第3大臼歯抜歯の要否あり 拡大装置(トランスパラタルアーチ, プレート等) 骨格性または両側性シザースバイト ・下顎歯列幅を拡大して咬頭間接触を回復<br>・成長期に有効(非抜歯治療) – 6~12ヶ月(成長期を活用) 機能的装置(Herbst等) 上顎前突を伴う骨格性シザースバイト ・下顎前方誘導で咬合改善効果<br>・上顎抑制効果も期待可 – 約6~8ヶ月(連続使用) マウスピース矯正 軽度~中等度の歯性シザースバイト ・目立たず痛み少<br>・必要に応じて取り外せる<br>・協力度に依存(装着時間要管理) – 6~12ヶ月(協力度要) 外科矯正(オルソグナシック) 重度の骨格性シザースバイト ・骨格的不調和を根本的に矯正<br>・審美的・機能的効果大 – 外科・矯正の組合せ(長期治療) リンガルアーチ(下顎拡大用)+バイトブロック:第2大臼歯のシザースバイト矯正に用います。Koulらは改良型Goshgarianアーチとバイトブロックで2~3ヶ月で第2大臼歯を正常位に改善しています 。非協力度装置のため効果的ですが、舌側の拡大スペースが必要です。 矯正用インプラント(TAD)+エラスティック:重度例では上顎側へ挙上力、下顎奥歯への矯正力にTADを利用します 。Baikらは上顎挙上に2本のTAD、下顎舌側傾斜にリンガルアーチを用い、安定した改善を得ました 。TADは骨から直接支持できるため、歯牙への望ましくない力(副作用)を抑制できます。ただし、第3大臼歯が干渉する場合は抜歯が必要となる可能性があります 。 拡大装置(トランスパラタルアーチ、Schwarzプレート等):上下顎の幅の不調和を正す方法で、成長期の児童に適しています。トランスパラタルアーチを用いて上顎に対向的に拡大しながら、下顎のシザースバイト歯列を改善します。矯正コミュニケーションと協力度が必要ですが、非抜歯での治療も可能です。 機能的装置(Herbst等):上顎前突を伴う骨格性シザースバイトではHerbst装置などを併用し、下顎を前方誘導して咬合を誘導します。例えばFavaroらは小児例でヒューバースト装置を用い、シザースバイトを含むクラスII不正咬合を効果的に改善しました 。 マウスピース矯正:軽度の歯性シザースバイトならアライナーも選択肢です。Favaroらの小児例ではインビザラインを用い、審美的にシザースバイトを是正しました 。ただし取り外し可で協力度に依存するため、重度例では適さない場合があります。 外科矯正:骨格性で著しい左右非対称や咬合高径異常がある重度例では、矯正歯科治療と顎矯正手術を組み合わせます。早期診断・矯正単独での改善が遅れると、外科介入が必要になることがあります。 以上の治療では通常3~12ヶ月程度の期間を要します 。典型的には第2大臼歯単独なら数か月で是正できますが、広範囲の歯列を動かす場合は1年以上かかることもあります。また症例によっては治療開始前に親知らずを抜歯してスペース確保する場合があります 。治療後は後戻り防止に保定装置を用い、顎位と咬合安定をモニタリングします。

 

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