
お子さまの「歯ぎしり」は放置していいの?
6歳に「歯ぎしり」ピークがくる理由と、歯ならび・呼吸への影響について「夜中、隣で寝ている子供からギリギリと大きな音がする」「朝起きたら、子供の歯がすり減って平らになっている気がする」「歯ぎしりが激しくて、将来の歯並びに悪影響が出ないか心配……」
矯正歯科のカウンセリングの現場で、保護者の方々からこのような切実なご相談をいただくことは非常に多くあります。
暗い部屋に響く激しい音を耳にすると、「どこか体調が悪いのではないか…」「ストレスを抱えているのではないか…」と不安を感じるのも無理はありません。心配になってしまいますよね。
しかし、結論から申し上げますと、小児期の歯ぎしり(ブラキシズム)は成人のそれとは背景が大きく異なり、成長発育のプロセスにおいて「必要なステップ」である側面も多分に含まれています。
今回は、矯正歯科専門医院の視点から、発現頻度、原因、歯ならびへの影響、そして「見守るべきか、介入すべきか」の判断基準について、最新の知見を交えて詳しく解説していきます。
1.小児ブラキシズムの実態
なぜ「6歳」にピークがくるのかまず、お子さまの歯ぎしりがどれくらいの頻度で起きているのか、統計データを見てみましょう。
日本小児歯科学会等の調査をまとめると、年齢によって顕著な特徴があることがわかります。
3歳前後(乳歯列完成期):約13%6歳前後(混合歯列期開始):約24%(発現のピーク)12歳前後(永久歯列完成期):約11%
このデータからわかる通り、お子さまの歯ぎしりは「6歳前後」に最も多く見られます。
2–12歳のお子さまの歯ぎしりをしている割合21.0%という報告もあり、実に5人に1人近いお子さまが経験している計算になります。
なぜ6歳がピークなのでしょうか?それには、この時期特有の「お口のダイナミックな変化」が関係しています。
6歳は、乳歯の後ろから「6歳臼歯(第一大臼歯)」が生えてきたり、前歯が抜け替わったりする時期です。
噛み合わせの高さや位置が一時的に不安定になるため、脳がその違和感を解消しようとして、無意識に歯を擦り合わせ、新しい噛み合わせの位置を探っている(セルフ・アジャスト)という説が有力です。
つまり、6歳前後の歯ぎしりの多くは、「大人の歯を正しく迎え入れるための準備運動」のようなものと言えるかもしれません。
2.「見守っていい場合」と「専門医に相談すべき場合」の境界線
前述の通り、多くは成長過程の「セルフ・アジャスト」ですが、放置せず専門医に相談すべきサインも存在します。
まず、歯の摩耗(すり減り)が激しく、冷たいものがしみる、あるいは顎の痛みを訴える場合です。
これらは将来的な歯の寿命や顎関節の発育に影響を及ぼす可能性があります。
また、特に注目すべきは「睡眠の質と呼吸」との関連です。
激しい歯ぎしりに加え、いびきや口呼吸が見られる場合、気道の狭さを解消しようとして体が無意識に顎を動かしているケース(睡眠時無呼吸症候群の予備軍など)も考えられます。
矯正歯科では、単にマウスピースで歯を守るだけでなく、「正しい噛み合わせへの誘導」や「呼吸しやすいお口の環境づくり」という根本的なアプローチが可能です。
「いつか治るだろう」と一人で抱え込まず、お子様の健やかな成長のために、一度お口全体のバランスをチェックしてみることをお勧めします。
3.なぜ子供は歯ぎしりをするのか?
多角的な原因の考察お子さまが歯ぎしりをする理由は、一つではありません。
現在、専門家の間では、主に以下の4つの要因が複雑に絡み合っていると考えられています。
①生理的要因:咬合の確立と顎の成長前述の通り、生え変わり時期の違和感解消です。また、乳歯は永久歯よりもエナメル質が薄く、摩耗しやすい特徴があります。適度に歯が削れることで、顎が横方向にスムーズに動きやすくなり、顎の横幅の成長を促している可能性も指摘されています。
②睡眠の質と中枢神経系の発達(微小覚醒):ブラキシズムは「睡眠中の微小覚醒(Micro–arousal)」と密接に関連していることが判明しています。睡眠中に脳が深い眠りから浅い眠りへ切り替わる際、自律神経が活発になり、それに伴って顎を動かす筋肉(咀嚼筋)が活動して歯ぎしりが起こります。お子さまは脳や神経系が発達段階にあるため、睡眠リズムが不安定になりやすく、結果として歯ぎしりが出現しやすいと考えられています。
③呼吸器系の問題(気道と鼻呼吸):矯正歯科医が最も注視するのが、この「気道」との関連です。アデノイドや扁桃の肥大、アレルギー性鼻炎などで鼻呼吸が阻害されると、睡眠中に気道が狭くなります。この際、生体は気道を確保しようとして下顎を前方に突き出すような動きをすることがあり、それが結果として激しい歯ぎしりとして現れることがあります。近年、睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の疑いがある小児において、ブラキシズムの頻度が高いことが報告されています。もし、歯ぎしりと同時に「いびき」や「激しい寝相」が見られる場合は、呼吸の問題を疑う必要があります。
④心理的・環境的ストレス:進級、習い事、家庭環境の変化など、子供なりにストレスを感じると、交感神経が優位になり、睡眠中の筋活動が活発になります。6歳は小学校入学という大きな環境変化の時期でもあるため、これがピークの一因になっているという見方もあります。
4.矯正歯科医が懸念する「歯ならび・咬合への影響」
「生理的なものだから放置していい」と一概に言い切れないのが、矯正歯科的な側面です。
長期にわたる、あるいは過度なブラキシズムは、以下のようなリスクを伴う可能性があります。
歯の過度な摩耗(咬耗)生理的な範囲を超えて歯が削れると、噛み合わせの高さ(咬合高径)が低くなってしまいます。
これにより、将来的に「過蓋咬合(かがいこうごう:噛み合わせが深すぎる状態)」を助長したり、顎関節への負担が増大して顎関節症のリスクを高めたりすることが懸念されます。
顎の成長バランスの乱れ片側だけで強く食いしばる癖(偏位的なブラキシズム)がある場合、下顎の成長方向に左右差が生じることがあります。これは顔の非対称や、上下の歯の真ん中がズレる「交叉咬合」の一因となる可能性が示唆されています。
矯正治療への干渉すでに矯正治療を始めている場合、ブラキシズムによって装置が外れたり、マウスピース(アライナー)が破損したりすることがあります。また、強い力によって歯の移動が計画通りに進まなくなることもあります。
5.ご家庭でできる「歯ぎしりチェックリスト」
お子さまの歯ぎしりが「様子見でいいもの」か「相談すべきもの」か、以下の項目を確認してみてください。
1.朝起きた時の不調:「顎が痛い」「歯が浮く感じがする」と言っていないか。
2.歯の形態変化:犬歯の先が平らになり、奥歯の溝が完全に消えていないか。
3.お口の中のサイン:頬の内側に白い線(噛み合わせの跡)や、舌の縁にガタガタした跡がないか。
4.睡眠時の呼吸:いびきをかいている、口を開けて寝ている、無呼吸のような時間がある。※特に4番の呼吸に関するサインがある場合は、早めに専門医(歯科または耳鼻科)への相談をお勧めします。
6.矯正歯科で行うアプローチと解決策
当院のような矯正歯科専門医院では、ブラキシズムそのものを「止める」ことよりも、「ブラキシズムが起こる背景(原因)を改善し、悪影響を最小限にする」ことに注力します。
A.口腔筋機能療法(MFT)「お口のトレーニング」です。舌を正しい位置(上顎のスポット)に置き、口周りの筋肉をリラックスさせる訓練を行います。これにより、日中の「食いしばり」を減らし、夜間の筋肉の緊張を和らげる効果が期待できます。
B.上顎の急速拡大鼻詰まりや口呼吸が原因で歯ぎしりが起きている場合、上顎の幅を広げる矯正装置を使用することがあります。上顎を広げると鼻腔の通りが良くなり、鼻呼吸がスムーズになることで睡眠の質が改善し、結果として歯ぎしりが軽減するケースが多く報告されています。
C.ナイトガード(マウスピース)の検討永久歯の摩耗が非常に激しい場合や、顎関節に痛みが出ている場合に検討します。ただし、成長期のお子さまに硬いマウスピースを長期間使用すると、顎の成長を妨げる恐れがあるため、当院では成長発育を考慮した特殊な設計のものや、ソフトタイプを慎重に選択します。
D.スリープハイジーン(睡眠衛生)の指導生活習慣のアドバイスです。「就寝前のスマホ・ゲームを控える」「室温を適切に保つ」「入浴でリラックスさせる」といった、自律神経を安定させるための環境作りをサポートします。
7.まとめ
保護者の方へのメッセージお子さまの歯ぎしりは、その多くが成長過程における一時的な現象であり、12歳を過ぎて永久歯列が完成する頃には自然と落ち着いていくものです。
まずは「やめなさい」と叱らずに、お子さまの体が一生懸命に新しい歯を受け入れようとしているサイン、あるいは少しお疲れ気味のサインとして受け止めてあげてください。
ただし、「歯の削れ方が尋常ではない」「いびきがひどい」「顎を痛がる」といった症状が伴う場合は、放置せずに専門医の診察を受けることが、将来の健康な歯並びと全身の健康を守ることにつながります。
当院では、単に歯をきれいに並べるだけでなく、呼吸や嚥下、そして睡眠の質までを考慮した「一生涯の健康を支える矯正歯科治療」を目指しています。夜中の音に不安を感じたら、まずは定期検診のついでにお気軽にお話しください。
お子さまの健やかな成長を、お口の中からサポートさせていただきます。
(※本記事の内容は一般的な知見に基づくものであり、特定の個人に対する診断を保証するものではありません。症状がある場合は必ず対面での診察を受けてください。)
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